Fentanyl Sublingual Tablets Versus Subcutaneous Morphine for the Management of Severe Cancer Pain Episodes in Patients Receiving Opioid Treatment: A Double-Blind, Randomized, Noninferiority Trial.

J Clin Oncol. 2017 Mar;35(7):759-765.
PMID: 28113021



Summary
   フェンタニル舌下錠(FST)は、重篤な癌性疼痛の治療として皮下モルヒネ(SCM)などの非経口オピオイドに対する有用な代替薬物である。FSTとSCMの直接比較試験は存在しない。本試験の目的は投与後最初の30分以内の鎮痛効果に関して、SCMに対するFSTの非劣性を検証することであった。安定したオピオイド投与を受けている患者で重篤な痛みを経験した患者をFST100μgとSCM5mgにランダムに割り付けた。投与後10分、20分、30分後の平均した疼痛強度をNRSで評価した。グループ間差の非劣性マージンは、−0.6に設定した。114人の患者をFST群58人、SCM群56人へランダムに割り付けした。ベースラインの平均疼痛強度は両群ともNRS7.5であった。10-30分後の平均疼痛強度はFST群5.0、SCM群4.5であった。グループ間差の95%CIは非劣性マージンを含んでいた(-0.49;95%CI -1.10 to 0.09)。本試験でSCMに対するFSTの非劣性を証明することはできなかった。

私見
   緩和領域でのランダム化試験はとかくn数が少ない。なかなか試験が組みにくい状況なのである程度は仕方ないが、20人程度での試験で得られた結果が、あたかも強固なエビデンスのごとく取り扱われてることも日常臨床で時にみられる。本試験のエントリー数は114人と、緩和領域ではn数は比較的多いが、この人数での検討結果が十分かどうかは不明である。一般に非劣性試験ではハザード比の95%CIの上限が非劣性マージンを下回っていれば統計学的に有意と結論できる。逆に非劣性マージンをまたいでいる場合は非劣性を証明できないことになる。本試験ではFSTは引き分け狙いに失敗したことになる。
   投与後の疼痛強度の低下のグラフがFig3に描かれている。これをみると両群でベースラインのNRSは7.5であったが、30分後には約半分くらいまで除痛がかなっているようである。しかし、両群でのプロットをみると、FSTよりもSCMがすべてのポイントで下回っている。つまりSCM群の方が鎮痛効果が強かったと言うことになる。毒性に関しても両群とも忍容性があると結論されている。フェンタニル舌下錠の良い点として93%の患者が皮下注よりも舌下投与の方法を好んだということも書かれていたが、ちょっと苦しいか。本試験の平均年齢は60前であったが、高齢患者にとって舌下錠はなかなか難しいものであると日常臨床で実感することが多い。